「異常」 エルヴェ・ル・テリエ
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土日出勤のうえで「山の日」祝日を含む5日間の夏休みを希望したら、上司は前後4日間の土日休みと合わせて「とにかく休め!」と9日間もの連休を大盤振る舞いしてくれました
こんな長い休暇は社会人になって、もちろん初めて!
夏休みの初日に鈍った体を山歩きで酷使し、それ以降は天候の悪さを見込んで読書三昧することに
フランス人作家エルヴェ・ル・テリエによる小説「異常(アノマリー)」
本国フランスはもとより、すでに世界で大きな話題となっている様子
フランスを飛び立ち乗客243人とともにニューヨークへ向かったジャンボ機が超ド級の積乱雲に遭遇し、機体を損傷しながらも無事空港に到着する
ところがその3か月後に全く同じ243人の乗客を乗せた、同じ嵐の乱気流で損傷した同じジャンボ機が突然出現し、アメリカ合衆国政府は「プロトコル42」に従って対応に奔走することに
3か月を隔てただけの自分と同一の存在(重複者)と出遭った時、人はその事実にどう向き合うのか
個々の乗客の職業、家庭環境、生い立ち、そして現状がそれぞれで異なった反応を両者にもたらす記述が、読みどころのひとつ
そして、なぜそのような(重複者が現れるという)事象が起きたかを解明しようとする「プロトコル42」作成を担当した科学者たちのSF的「或る仮説」がもう一つの肝
知識や知性、さらには才気までをもつねに凌駕する見事なもの、それは無理解だ。
本書第1部冒頭のエピグラフにある「無理解」は、無知や無教養、無能によるもの
その「無理解」のすべての要素を備えた、カツラをかぶったようなヘアスタイルの金髪の某合衆国大統領(小説の時代設定はバイデン大統領の前)によって、この壮大な物語はあっさりと終焉を迎える
愚かな為政者に寛容な人びとが多いとしても、「神」は決してそれを許さない
そんな読後感を持った面白本、クールな私のおすすめです!