月の満ち欠け 佐藤正午
年齢に不釣り合いな大人びた言動で周囲をドキリとさせる「おしゃまな」女の子
知っているはずのない黛ジュンの「夕月」を口ずさみ、遊びに行った友人宅の父親の高価なライター「デュポン」のブランド名を指摘する7歳の少女
それが、前世の記憶を持ったまま生まれてきた「生まれ変わり」(=わが子では無い、誰か)なのでは、と周囲を困惑させながら展開し、そして収束する物語
岩波文庫的に発刊された佐藤正午の直木賞受賞作です
記憶を受け継いで生まれてくる子ども、というと
梶尾真治の名作「おもいでエマノン」をすぐ思い浮かべてしまうけれど、そちらは地球創世期からの記憶を全て持つという壮大すぎるスケール(笑)
かなり以前、当時人気絶頂のお笑いタレント島田紳助が振付師の流石南に弟子入りして修行中だった6歳の少女(流石組レイナ)に対して
周りは『小さな子どもだから』と思ってるけど、その大人の思惑や行動があなたには全部透けて見えちゃっているでしょ。それでも自分は周囲に合わせて「子どもらしく」振舞う、おじさんもそんな「子ども」だったんだよ
と話しかけるのをTVで観たことがあり、そのシーンがなぜか本書「月の満ち欠け」を読んでいる時にフラッシュバック
巻末に参考文献として挙げられている、実際にあったと思われる「生まれ変わり」がモチーフとなっている本作、私はピュアな恋愛小説として楽しませてもらいました
強く想い続けていれば、好きだった人に必ずまた会える
なぜか boy meets girl ではなく年齢差のある girl meets man なのだけれど
意中の人とやっと再会するラストシーンは「おもいでエマノン」と同じ、ただ本作「月の満ち欠け」は最後までハラハラドキドキさせてくれる分、より劇的で感動的なハッピーエンドでありました
「解説はお断りします」という表題の、伊坂幸太郎の公開付文(?)も含めて、一読の価値あり
おすすめ本です
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