その人はゆっくりと死に向かう
その人はゆっくりと死に向かう
旅をしない人
本を読まない人
その目で発見することを知らない人
その人はゆっくりと死に向かう
自尊心を自ら破壊する人
決して他人の手を煩わせない人
その人はゆっくりと死に向かう
日常の奴隷になり
毎日同じ道を歩く人
決して道標を変えない人
決して服の色を変えようとしない人
そして、決して見知らぬ人に声を掛けない人
その人はゆっくりと死に向かう
瞳に再び光を与え
傷ついた心を癒す
愛情や感情の渦を避ける人
その人はゆっくりと死に向かう
仕事でも愛情生活でも不幸にある時
進む道を変えない人
夢を実現するために
危険を冒さない人
人生で一度たりとも
尤もらしい助言に逆らうことのなかった人
今を生きよ!
今日に賭けよ!
今すぐ動き出せ!
ゆっくりと死に向かうな!
自らの幸福を奪うな!
Pablo Neruda (訳:矢倉英隆)
「三人のパブロ」のひとりとして五木寛之の小説「戒厳令の夜」に登場する、チリの詩人パブロ・ネルーダの作品
その詩をフランス語で目に留めた矢倉英隆氏が日本語に訳し換えたもの
職場で回覧されてくる医学雑誌に氏が連載する哲学エッセイからの引用です
ずいぶん前の話になるのですが、職場の上司に頼まれて研究に使う実験用マウス(ハツカネズミ)を出張ついでに飛行機の手荷物で札幌から東京へ運んだことがありました。羽田空港のロビーでそのマウスを受け取りに来られたのが、訳者の矢倉先生でした
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