それがどうしたの?
通称‘くらたま’と対談形式の「こころの薬」、深夜のJR特急内で一気読みの面白さ。大平健の本は1990年の「豊かさの精神病理」、1995年の「やさしさの精神病理」以来、手に取るのは随分久しぶりだったけど、そのわかりやすさと面白さは全く変わってなくて、楽しめました。
倉田真由美がマスコミからバッシングされた時に、同情してくれた人の言葉より、中村うさぎの「あの程度の報道で、あんたがそこまで落ち込むとは思わなかったよ」との、距離を置いたひとことに救われたというエピソード。
それは大平健の「解説」によると
同情されると重苦しさがますます積み重なってしまう。海で泳げない人がおぼれている時に、隣りで一緒におぼれられても無意味。本人が深刻に考えてしまった問題も、実は大したことではない、と正しいところを突いた言葉が救命具の役割を果たす
ということらしい。「ちゃんと立てば、底に足が着くよ!」ってことかな(笑)
フランスのミッテラン大統領が、大統領府で自分の私生児と暮らしていることがバレて、記者会見で質問されたとき、「そう、それが?(エ・アロール?)」と答えたんです。大変なスキャンダルが、「エ・アロール?」の一言で雲散霧消してしまった。もし彼がごまかしたり怒ったりすれば、きっと大騒ぎになったでしょう。翌日の新聞には、ミッテランが「それがどうした?」と言ったという記事になっただけでした。
これは僕たちが人生で否応なく出会う、いろいろな事態に対処できる実にいい台詞(セリフ)だと思います。
ちなみに、ブログの決めゼリフで「それが、なにか?」と書くのが一部で流行ってるみたいですけど、それとはいっしょにしないでね。
この大平先生は、「甘えの構造」を著した土居健郎の直弟子さん(精神科医)なのだけど、そのあたりのエピソードも読み応えがあります。土井御大は注目を浴びる理論を発表しても、「理論と実践は別」と、理論をむりやり当てはめるようなことはせず、患者一人ひとりに向き合う治療を行った、とのこと。患者の前でいきなり居眠りしてしまうとか(笑)
帰りの深夜JRで読んだ1冊はこれ
有川浩(ありかわ・ひろ)は、何を読んでもホントにいい。まだ図書館戦争は読んでないんだけど・・・
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