クラテッロ
昨年末、和商の吉岡さんで目にした見慣れぬ生ハム。パッケージに何も書いてなくて、ワインのつまみにいつも購入してるお手頃プロシュート(プロシュット)とは明らかに違うし、カウンターにデンと鎮座してる原木ハモンイベリコ・ベジョータとも違うので、何だろうと思っていたら「クラテッロですよ」と教えていただきました。
喰らってろ? グーグるとこの本に詳しく紹介されているとのことなので、さっそくAmazonで購入。訳者が、美人でワインの優良インポーター代表のようなラシーヌの合田泰子女史だというのも気に入って(笑)
さて、アンティパスト(前菜)の皿には、バラ色がかった羊皮紙のような、微妙なかげりのある肉の薄片が、同心円状に並んでいる。プロシュットに違いない。「いや、クラテッロです」と、訂正する主人。驚き入った沈着さで、自分の身体の後方下部を掌でそっと叩いて、「ここからのものです」。その当時、上品な人たちの面前で、「お尻(クーロ)」なんて言葉は口にすべきでなかったが、あらためて問い直すまでもなく、語源の察しはついた。プロシュットよりいっそう柔らかで、感触はもっと優しく、風味はずっと豪勢だ、と主人は請けあった。 <1997年発行の同書 p.198より>
太ももを使う通常のプロシュートと異なり、もっとも肉付きのいい謂わば尻肉から作られ、熟成もけっこう怪しげな環境で行われるらしく、「伝統的」な製造法は行政指導で禁止されているとのこと。それゆえ、古来の本物はヤミで作られて消費され、行政指導に従い衛生面に配慮した「製品」のみが一般市場に出回っている由。
あまり味覚が鋭くない私でも、プロシュートと違う独特の熟成香や旨みははっきり感じました。クラテッロ、特に「香り」が決め手のようです。
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