さびしい男たち
辻静雄のすぐれた伝記小説「美味礼賛」の作者のよる男女小説集。普通なら恋愛小説と紹介すべきなのだろうけど、この人の書く「恋愛」物語はことごとく、さびしい。特に、男が。青春時代の空回りを描いた短編集「さびしい恋人」(1990年)の、もろ中年バージョンといえるかな。読者にとっても思い当たることがいっぱいあるから、こんな風に刊行されるんだろうけど、読んでて決して楽しくなりません(笑) 女なんて面倒なだけ、その結論が本書「サルビアの記憶」の中の一編「完全な世界」。高原の別荘で男同士が酒を飲みながら夜半まで話し込むだけの物語。
「男だけで食事をつくり、男だけで酒を飲み、男だけで釣りに行く。ずっとこんなふうにやってゆけたら最高だな」「女はどうするんだ?」 ・・・ 「女なんて面倒なだけじゃないか」「まあな」「もしここに女がいたら、おれたちはこんなにすっきりした気持ではいられないぜ」 ・・・ 「なにしろ女というのは、おれたち男を好きにならせる方法をすっかり心得ていて、好きにならせるだけならせると、こんどは悩ませにかかるんだ」「おまえ、よく知ってるな」「そういう目に会っていない男なんていないさ」
うわっ、長い引用。こんなに引いたら絶対怒られるな。この本や、下の本を読むくらいなら、文庫でも出てる「美味礼賛」の方を読んでないかたにはおススメします。「美味礼賛」の冒頭、辻静雄の私的な食事会のシーン。シェフが用意するディナーとワインのあるテーブルで絶対にやってはいけないこと、が端的に描かれています。やっている人、けっこう見かけるからコワいです。
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