20代の頃に読んだ新書本に、なだいなだ氏がワインの楽しみ方について書いたものがあります。その中で「味と味わいの違い」を述べていて、アルコール中毒の患者をながく診てきた精神科医でもあるなだ氏は「アル中になる人間は酒の味は知っている。だが、味わうことができない。」と説明しています。
外国に行って日本通の現地の友人が食後に「日本のお茶がありますよ」と言って、ソーサーに載せたティーカップで出してくれる緑茶。その時の微妙な違和感。もうひとつ、「お酒はお燗に限る」とコーヒーポットに入れて供される日本酒。やはり、なんか奇妙。そんな例をひきながら、こう結びます。
めんどうくせえ、好きなように飲んでおいしいと思えば、それでいいだろ、という人もあるだろう。だが、飲み方というのは、いいかえれば、それをとりまく文化というものなのだ。
なだ氏のこの本、実は肩のこらない軽妙なエッセイで、かつ実用的な知識も盛り込んであるスグレモノなのだけど、冒頭の数ページで上記のようにワインのそれなりの味わい方を求めています。ある程度の年齢になると、さすがに電車で床に座ったまま化粧するような女子高生的行動はしなくなるけれど、酒席でそれに近いことを平気でする大人(?)はけっこう見かけます。自戒しなきゃ・・・
また、脱線。 器が変わると味わいも変わる、らしい。いいグラスでいただくワインは、確かにおいしく感じる。特に私は雰囲気で酔うタイプだから(笑) 上の写真の左側、ローゼンタールのエスプレッソ用カップ‘CUPOLA’、ほとんど芸術作品ともいえる貴重なもの。ワイン仲間から誕生日祝いに頂きました。これもなぜか男性から(笑) このカップでエスプレッソを飲んでる自分がイメージできないのが、つらいところ・・・・
しつこく、器の話。ガストーラでピンチョスとともに味わった吟醸酒。その時はシェリー用の小ぶりの高足グラスで出して下さったんですが、これについてはマダムとシェフで意見の相違があったそうです。マダムの、日本酒なのだから「ぐい飲み」でしょう、やっぱり! に対して、修行時代にサーヴィスの経験も積んできたシェフが「それはちょっと・・・・」、ということに。相棒の持ち込んだお酒でサプライズを演出してくれたこと、そしてピンチョスとの取り合わせからすると、シェフの「読み」通りでした(笑) 記念すべきディナーの最初から「やられた~っ」という感じでワクワクしましたから。