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灰谷健次郎さん

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鉄三のことはハエの話からはじまる。鉄三の担任は小谷芙美先生といったが、結婚をしてまだ十日しかたっていなかった。大学を出てすぐのことでもあり、鉄三のその仕打ちは小谷先生のどぎもをぬいた。小谷先生は職員室にかけこんできて、もうれつに吐いた。そして泣いた。

教室でトノサマガエルを引き裂き、踏み潰したひとりの「問題児」と新米教師の、ある事件の描写からこの本は書き始められています。児童文学が決して「子ども向けの物語」 ではなく、「子どもにもわかるように書かれた文学」であることを教えてくれた作品です。子どもの行動や考えを大人の都合、視線で解釈することがいかに浅はかであるか、そして子どもと教師がお互いにどれだけ影響し合う大きな存在であるか、を読む人に強く訴えてくる本です。私は当時、教育大学へ進んだばかりの友人に「とにかく読め!」と、この本を送り付けました。

教育の危機  親子の断絶  若者たちの挫折  今何かを喪失した日本が熱烈に求めているものを こんなにも心あたたかく こんなにも優しい口調で作者は語りかけるのです。まだ希望はあるのだ! 

30年以上も前に世に出た本の帯に書かれたことば。今でも、いまこそ、再読されるべき作品だと思います。11月23日、先週の木曜日に亡くなられた灰谷健次郎さんのご冥福を祈ります。

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