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日曜日たち

various_sunday 頭痛がないだけで、日曜日がこんなにハッピーだなんて。

げんき米Fさんから貸して頂いたこの本は、都会の日曜日に起きた出来事を描いた五つの物語からなる短編集。それぞれ独立した話を、小さな家出兄弟たちがカンダタの細い蜘蛛の糸のように結び付ける。金城一紀のGOのようにすらすら読める文体。でも軽くやり過ごせない。のっけの「エレベーター」。Sunday_events 誰かを愛するということが、だんだん誰かを好きになることではなくて、だんだんと誰かを嫌いになれなくなるということなのだと知り始めた定職の無い若い男。付き合っている彼女が「韓国籍」であることを偶然知ってしまったため、言おうと思っていた別れ話を切り出すタイミングを失う。世間でいうところの差別意識を自分が持っているとはこれまで思ったこともなかったが、こうやって、さっきまで言おうとしていたことを、その事実の前で反故にしてしまうのも、ある種の差別なのだろうか・・ とさらりと書ける感覚。さすが新鋭の芥川賞作家、というのはこじつけか(笑) 付き合う女性が替わるたびに相手の言うなりに職と住むところを替え、サンパウロまで行ってしまおうとする男が人生の輝きとは何かをおぼろげにも示す「日曜日の運勢」。Rolling stone gathers no moss. です。Ex_libris そして、希望のない物語はいやな私もすっきりページを閉じることができた、最後の「日曜日たち」。内容、装丁、Fさんの素敵な蔵書印、どれをとっても非の打ち所の無い本でした。

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コメント

ここ数日、ニフティのシステムVer.アップの影響で、このブログもやたら重くてまともに更新できませんでした。まだ重くて、イヤになってしまいます。
男女が逆転していますが、日曜日のエレベーターと同じようなエピソード、藤堂志津子の短編にもあります。年上の女性と付き合っていた若い男の煮え切らなさが、「在日」であることを言い出せなかったことにきているのを知って、男を「情けない」と思う女性の心情が書かれていました。まあ、そんなもんなんでしょうね。

投稿: ユンボギ | 2006年3月30日 (木) 18時28分

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