ららら アトム
「プルートウ」 巷の評判とたがわぬ、物凄い本。昭和39年に連載された鉄腕アトムの一話「地上最大のロボット」を本歌取りした物語。そう、まさしく物語。表紙のアトム(!)が人間らしく見えるだけじゃなく、登場するロボットたちがみんなそれぞれに深い悲しみや想いを抱いているのが、痛いほど伝わってきます。大量破壊兵器を除去し平和を維持するという名目で紛争地へ派遣されたアトムを含む高性能ロボットたち。しかし、実際には自分たちが破壊(殺戮)の当事者となってしまい、その現実が悪夢のようにメモリーで際限なく反芻され、「こころ」に深い傷を負う。その対極として登場する‘平和維持軍’を主導(首謀?)した某合衆国某大統領の、あまりにも「人間」らしい不気味さ。鬼畜、というより得体の知れない軟体動物に触れたような悪寒が、読んでいて背中を這い上がってきます。
「人間の記憶ってのは便利なものでね。忘れるっていう機能があるんだ。つらい記憶をためこんでいくと、生きていられなくなる。・・・・・で、忘れるわけさ。だが、ロボットの場合はそうはいかない。」「おっしゃる通り、私はただの兵器です。敵軍のロボットを・・・ 私の仲間を何万体も破壊しました。何万人もの仲間を殺した記憶を、私の人工知能がリピートするのです。」「ピアノを弾けるようになりたいのです。もう・・・・ 戦場に行きたくないから・・・・ 」 浦沢直樹、とんでもない天才ですね。貸してくださった座敷ワラシさん、ありがとうございます。
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コメント
この作品と「20世紀少年」を同時に連載中なのが、また凄いです。そろそろ「20世紀少年」は最終章だと思っているのですが、そう思いながら1年位たっています…結末早く知りたいような、まだ続いてほしいような…
投稿: 座敷ワラシ | 2006年3月15日 (水) 00時13分
座敷ワラシさんのイメージとしては、土田よしこの「きみどり、みどり、あおみどろ」あたりがフサワシイと思うのですが、けっこう社会派のコミックを愛読されていることが判り、意外です。先日お借りした「モンスター」も、すごい。
投稿: ユンボギ | 2006年3月19日 (日) 00時54分