Who is a scientist ?
好奇心が強くて、誰もまだ知らない新しいことを一番最初に見つけたい!成し遂げたい!というのが「普通の」科学者だと思います。私は理系の大学出身で、末端研究職に15年ほど身をおいていた経験があるのですが、野心がないと大きな成果は上げられない、と信じています。韓国のES細胞捏造事件、世界の最先端を走っていたとみなされていた人物だけに大きな報道をされました。国を挙げて支援体制を築いていたのでショックもひとしおでしょう。実は私の職場でも同僚が似たような研究をしています。善意の人頼みの不安定な献血に依存せず、輸血に使用できる血液を自由に増やす(=製造する)技術をです。一部は既に実用化されて、臍帯血(新生児のへその緒のなかに残った血液)から細胞を増やして、白血病の患者さんの治療に使われています。
研究者も人間ですから、成果を出してゆくうちに「もっと認められたい」という思いが当然でてきます。それが向上心であったり、出世欲になったりするのですが。必要な研究費を得るためには、それなりの成果を出す(=論文を書いて認められる)ことが不可欠なのですが、そうそう素晴らしい実験結果が出るわけじゃありません。何年もかけて研究したことを、別な施設で同じ研究をしていた人が一日先に発表したら、それまでの苦労はまさしく水の泡になってしまいます。だから、アセるんです。多少データが足りなくても、あるいは全く無くてもでっち上げて競争相手より早く発表する(したい!) 有名な(重力を発見した)ニュートンでさえ、そうでした(「背信の科学者たち」)。栄誉をめざすトップグループはもっと熾烈、エゲツナイです(「ノーベル賞の決闘」、「ノーベル賞を獲った男」)。成功するためのノウハウ本まで出ています。昔、マジメに読んでしまいました(笑)
だから、競争や名誉欲とは無縁に、女性への偏見や劣悪な設備をものともせず、自分の純粋な興味だけで遺伝子の転移を発見しノーベル賞を与えられた遺伝学者バーバラ・マクリントックは凄いし、感動もしました。でも、1983年の話です。今、そのような牧歌的な話は、残念だけど無いと思います。「科学者も、ただの人間だ」ということを確認しただけの、今回の事件でした。
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